ステアの役割、責任
アウトリガーカヌーの最後尾に座り舵を取ることを「ステア」と呼びます。また、ステアを担当するパドラーのことも「ステア」と呼びます。風、波、流れ、天候など周りのコンディションを読み取り、他のパドラーの状態などにも注意を払いながら、舵を取り指示を出して、カヌーの全てをコントロールするリーダー的な役割を果たします。
またステアは海上ではキャプテンとして、カヌーや乗り手に関する全ての責任を負います。従って、ちょっとしたツーリングであっても、コンディション、カヌーの安全性、乗り手の体調などを入念にチェックし、出艇の判断を下さなくてはなりません。海上に出てからも、常に神経を集中させて様々な変化を感じ取り、カヌーや仲間を安全に目的地まで送り届けることを心掛けましょう。
ステアの考え方
まずはカヌーの目的地を定めます。そして地図を参考にするなどして、目的地に向かう安全かつ最短のコースを決めた上で、コースを見極めるために陸地の目標物を探します。海沿いの建物、山、岬などの特徴ある地形など常に二つ以上の目標物を定めるようにしましょう。
目標物を定期的にチェックしながら、カヌーの針路を決定します。風や潮流によってカヌーが流される場合、カヌーの向きと実際の針路が異なる場合もありますので注意しましょう。
基本は出来るだけ長い距離を直線的に移動することを目指しましょう。ただし、アウトリガーカヌーは様々な力によって簡単に向きが変わってしまう乗り物です。そこで、ステアはカヌーが針路から外れないようパドルを使って舵を取り続けることになります。
基本テクニック
アウトリガーカヌーには舵が付いていないので、ステア専用にデザインされたステア・パドルを使って舵を取ります。ステア・パドルは普通のパドルよりもブレード面が大きく造られています。このステア・パドルを使って水に対する抵抗を作りだし、カヌーの向きを変えるのです。
向きの変え方にはカヌーの脇にブレードを差し込んで舵のように使うポーキングと、横漕ぎを使ってカヌーを力づくで回すドローストロークと、大きく分けて2通りあります。
ポーキング
- パドルを曲りたい方向のサイドに持って準備します。
- カヌーのハル(船体)に沿って素早くブレードを水に差し込み、カヌーの底にブレードを貼り付けるようにします。
- 両手を使ってパドルを徐々にひきよせます。
- パドルをひねり、ブレードの後ろ側を外へ押し出すようにして舵のように使います。
ドローストローク
- パドルを曲りたい方向と逆サイドに持って構えます。
- 上体を外へ乗り出し、カヌーから離れたところへ素早くブレードを差し込みます。
- そのままブレードに向かってカヌーのテールが引っ張られるように、横向きにパドリングします。
- カヌーのハルまでパドルがきたら、素早く水から抜きます。
練習方法
ステアの技術はとても繊細で感覚的なので、海の上で経験を積むしか上達への道はありません。海や舟の特性を理解するにはアウトリガーカヌーに乗る以外にも、泳いだり、サーフィンに挑戦するなど、とにかく海と付き合うことが大切です。また、責任のプレッシャーに負けて挑戦を止めてしまうことがない様、ある程度の気楽さやチャレンジャー精神も必要です。
練習する際は風や波の穏やかな日を選び、広い水面が確保できる場所で、経験者と一緒に行いましょう。
ポーキングによる旋回
- アウトリガーカヌーを完全に停止させます。
- カヌーの左側からパドルを45度の角度でカヌーの底へ向かって差し込みます。
- 両手を使ってブレードを左外へ向かって押し出します。
- カヌーを左回り(反時計回り)に360度回転させるまで繰り返します。
- 一旦、回転を停め、右側で同じことを繰り返し、カヌーを右回り(時計回り)で360度回転させます。
- 右側にポーキングする際は、アマが持ち上がってHULI(転覆)することが多いので、体重は左側にかけるよう注意しましょう。
ドローストロークによる旋回
- アウトリガーカヌーを完全に停止させます。
- カヌーの左外1m程度のところへまっすぐブレードを差し込みます。
- 両手を使ってパドルを引っ張り、カヌーのテールをパドルへ向かって引き寄せます。
- これを繰り返して、カヌーを右回り(時計回り)に360度回転させるまで繰り返します。
- 一旦、回転を停め、右側で同じことを繰り返し、カヌーを左回り(反時計回り)で360度回転させます。
右側でドローストロークをする際は、アマが持ち上がってHULI(転覆)することが多いので、体重は左側にかけるよう注意しましょう。
ターン&直進
- 陸地の目印を決めます。
- 目印に向かってパドリングし、カヌーを一定のスピードに上げます。
- スピードに乗ったら、左側にポーキングまたは右側でドローストロークを始めます。
- カヌーが左へ回りだしたらそのまま360度の回転を続けます。
- 再び陸地の目印が見えたら、直ぐに右側にポーキング、または左側でドローストロークを行ってカヌーの回転を停め、直進させます。
- 同じようにして右回りのターンと直進も練習します。
右回りの場合はHULI(転覆)のリスクが大きいので、十分注意しましょう。
上手くカヌーをコントロールするコツは、視点をできるだけ遠くにおいて、カヌーの向きを正しく判断することです。
ドッギング
- 2艇のカヌーを用意し、先行艇と追跡艇を決めます。
- 先行艇は好きなコースを進みます。
- 追跡艇は一定の距離を保ちながら、先行艇の真後ろについて同じコースを進むようにします。
お互いにカヌーをぶつけないこともステアの重要な技術です。
最初は出来るだけ低速で、慣れるに従って徐々に普通のスピードで練習してみましょう。